相続税評価の計算方法とその種類

query_builder 2024/03/26
相続土地
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相続税評価の計算方法とその種類

 

◆評価方法の種類

今回は、相続税評価額の算出方法をいくつかの代表的な財産に焦点を当てながら見ていきます。以下の8つの財産を取り上げます。

 

土地

貸地

建物

マンション

上場株式

預貯金

生命保険金

退職手当金

土地の評価方法

 

土地の評価は正確に相続税評価額を算出することが難しいです。なぜなら、土地はそれぞれが独自の特性を持っており、評価するための基準が複雑であるためです。

 

◆土地の評価

主に以下の2つの方法が使われます。

・路線価方式:この方法では、「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」である路線価を基にして土地を評価します。具体的な計算式は次の通りです。

【路線価×各種補正率×土地面積】

 

例えば、路線価が15万円で各種補正率が1.0、土地面積が100㎡の場合、相続税評価額は【15万円 × 1.0 × 100】で1,500万円となります。

 

路線価は国税庁のホームページで確認することができます。

 

【参考】国税庁ホームページ『路線価図・評価倍率表』

https://www.rosenka.nta.go.jp/

 

・倍率方式:路線価が定められていない地域では、土地の評価に倍率方式が用いられます。具体的な計算式は次の通りです。

 

【固定資産税評価額×倍率】

固定資産税評価額は、市区町村から毎年送られてくる納税通知書に同封されている「固定資産税課税明細書」に記載されています。土地の価格欄の額が固定資産税評価額です。

 

例えば、固定資産税評価額が1,000万円で倍率が1.1の土地を相続した場合、相続税評価額は【1,000万円 × 1.1】で1,100万円となります。

 

倍率は、路線価と同様に国税庁のホームページで確認することができます。

 

◆貸地の評価

土地を誰かに貸していた場合、その土地の相続税評価額は通常よりも低くなります。貸し出されている土地の相続税評価額は以下の計算式で求められます。

 

【更地の評価額×(1−借地権割合)】

ここでいう「更地」とは、貸し出されていない状態の土地を指します。更地の評価額は先述の「路線価方式」または「倍率方式」で算出されます。一方、「借地権割合」とは、国税庁が地域ごとに定めている30〜90%の間の割合であり、一般的に土地の利用価値が高い地域ほど借地権割合も高くなります。

 

例えば、更地の評価額が5,000万円で借地権割合が50%の土地(貸地)を相続した場合、相続税評価額は次のように計算されます。

 

【5,000万円×(1−50%)=2,500万円】

したがって、相続税評価額は2,500万円となります。

 

◆建物の評価

建物(家屋)の評価は非常にシンプルです。相続税評価額は以下の式で求められます。

 

【固定資産税評価額×1.0】

「固定資産税評価額」は、市区町村から届く「固定資産税課税明細書」に記載されています。たとえば、価格が「2,000万円」と記載されていた場合、相続税評価額は次のようになります。

 

【2,000万円×1.0=2,000万円】

 

したがって、相続税評価額は2,000万円です。

 

ただし、賃貸アパートや第三者に貸し出されている建物、または被相続人が亡くなる前にリフォームが行われた場合などは、別の計算方法が適用されることがありますので、ご注意ください。

 

◆マンションの評価

マンションを相続した場合、家屋と土地それぞれについて評価が行われます。家屋の評価については、市区町村から届く「固定資産税課税明細書」に記載されている価格が使用されます。計算式は次のとおりです。

 

【固定資産税評価額×1.0】

たとえば、価格が「3,000万円」と記載されていた場合、相続税評価額は次のようになります。

 

【3,000万円×1.0=3,000万円】

 

したがって、家屋部分の相続税評価額は3,000万円です。

 

一方、土地の評価は、路線価とマンション全体の敷地における所有する占有部分の割合(敷地権割合)に基づいて行われます。敷地権割合は不動産の全部事項証明書に記載されていますし、一般的にマンション売買契約書でも確認できます。マンションの土地の相続税評価額は、次の計算式で求められます。

 

【路線価×土地の面積×敷地権割合】

 

例えば、路線価が40万円でマンション全体の土地の面積が2,000㎡、敷地権割合が8,000/400,000である場合、相続税評価額は次のようになります。

 

【40万円×2,000㎡×8,000÷400,000=1600万円】

 

したがって、相続したマンションの相続税評価額は1,600万円となります。

 

◆上場株式の評価

「上場株式」とは、金融証券取引所に上場されている株式のことです。相続税評価額は以下の4つの中から最も低い額を採用します。

 

相続日(被相続人が亡くなった日)の最終価格(終値)

相続日の月の最終価格の月平均額

相続日の月の前月の最終価格の月平均額

相続日の月の前々月の最終価格の月平均額

例えば、被相続人が3月30日に亡くなった場合、上場株式の評価額を計算します。その日の終値が1,500円であったとします。同じ株式の3月の月平均額は1,300円、前月2月の月平均額は1,000円、前々月1月の月平均額は1,400円であったとします。

この場合、最も低い額は2月の月平均額の1,000円なので、この額を採用します。もし上場株式を1万株所有していた場合、相続税評価額は次のように計算されます。

 

【1,000円×1万株=1,000万円】

 

◆預貯金の評価

預貯金は大きく「普通預金」と「定期預金」に分けられます。普通預金については、相続開始日の残高が相続税評価額となります。

一方、定期預金に関しては、相続開始時点で解約したとみなし、元本に利子(源泉徴収税を差し引いた額)を加えた額が相続税評価額とされます。

 

◆生命保険金の評価

被相続人が亡くなった際に受け取る生命保険金(死亡保険金)は、その受け取った額が相続税評価額となります。しかし、この場合には「死亡保険金の非課税枠」という税制上の特典があります。法定相続人一人あたりにつき500万円が非課税とされています。

 

【500万円×法定相続人の数=非課税限度額】

 

たとえば、保険金が3,000万円あり、法定相続人が配偶者と二人の子どもだった場合、次のように計算されます。

 

【3,000万円−500万円×3人=1,500万円】

 

相続税評価額は1,500万円となります。

 

非課税枠が設けられているのは、死亡保険金が遺族の生活を守るためのものであるからです。また、法定相続人の中に相続を放棄した者がいても、その者も非課税枠の計算上、法定相続人の数に含まれます。

 

生命保険に関して注意すべき点は、被保険者が被相続人以外の場合です。たとえば、契約者と受取人が被相続人であり、被保険者が妻である生命保険はその典型です。このような場合、被相続人が亡くなると、相続人の誰かが保険契約を継続するか、契約を解約することになります。保険を解約すれば「解約返戻金」を受け取りますが、その額が相続税評価額となり、非課税枠の特典は適用されません。また、前払保険料や剰余金の分配なども考慮されます。

 

◆退職手当金の評価

退職手当金は通常、被相続人が生存して受け取る予定だった支給金です。したがって、被相続人が亡くなった後で退職手当金が支給される場合は、被相続人の財産として相続税の課税対象となります(死亡後3年以内に支給が確定した場合に限ります)。

 

しかし、この死亡退職金にも生命保険金と同様に非課税枠が設けられています。算出方法も同じで【500万円×法定相続人の数=非課税限度額】となります。

 

もし退職手当金が3,000万円で、法定相続人が配偶者と二人の子どもだった場合は次のように計算します。

 

【3,000万円−500万円×3人=1,500万円】

 

相続税評価額は1,500万円となります。

 

◆小規模宅地等の特例を活用して税金を抑える方法

相続税評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」が存在します。この特例を利用することで、相続した土地の評価額を最大で80%まで減額することが可能です。たとえば、土地の相続税評価額が4,000万円だった場合、条件に応じて800万円まで引き下げることもできるのです。この特例は、土地を相続した際にその土地を手放さなければならなくなる状況を防ぐために設けられています。通常、土地は高額な資産であり、相続税も膨大な額になりがちです。相続税は通常、現金で一括支払いする必要があります。そのため、現金が用意できない場合は土地を売却する必要が生じることもあります。しかし、このような場合には住まいを失うことも考えられます(土地は通常、家屋とセットで相続されます)。このような状況を回避するために、「小規模宅地等の特例」が用意されています。

 

「小規模宅地等の特例」の適用条件は、被相続人が事業用地や住居用地を所有していたかによって異なります。

 

最後に:相続税評価額は種類によって異なる計算方法や考え方があります

 

相続税を計算する際の基準となる相続税評価額。その評価方法は財産の種類によって異なります。被相続人が亡くなった場合、すべての財産を調査し、それぞれの評価方法で相続税評価額を算出する必要があります。この作業には一定の時間と労力がかかることが予想されますが、相続税の申告期限(被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内)に間に合うように進めることが重要です。申告期限を過ぎるとペナルティーが課される可能性があります。

 

もし相続税評価額に関して不安や疑問がある場合は、相続で専門知識を持つ税理士に相談することをおすすめします。税理士は評価方法について適切なアドバイスを提供してくれるだけでなく、特例のような相続税評価額を減額する方法についてもアドバイスしてくれます。もし、周りに相続に詳しい専門家がいない場合はぜひお問い合わせください。


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