正しい相続対策で「資産」として残す
貸家・アパートの相続にまつわる誤解やリスク、そして正しい対策について解説してきました。
今回は、その総まとめとして「なぜ節税一辺倒の対策が危険なのか」「本当にやるべき相続対策とは何か」を整理します。
1. 「節税」だけを目的にした対策の限界
相続税を少しでも減らしたい――。
その思いから「土地にアパートを建てる」ことを検討する方は今も多いですが、実際の現場では次のような限界が見えてきています。
- 税制改正により、評価額の圧縮効果は限定的になっている
- 借入を伴う建築では、逆に純資産が増えて相続税額が上がることもある
- 修繕費や空室リスクにより、赤字経営に転落するケースも少なくない
- 相続人が望んでいない場合、アパートは「負動産」と化す
つまり、節税目的で建てたアパートが、結果として**「資産」ではなく「負担」**になってしまう可能性が高いのです。
2. 相続トラブルの多くは「不動産」が原因
相続争いの現場では、不動産が原因となるケースが圧倒的に多いと言われます。
- 不動産は分けにくく、兄弟間で不公平感が生まれる
- 共有相続では、修繕や売却方針を巡って意見が対立する
- 経営を続けるか売却するかで揉め、家庭裁判所に持ち込まれることも
親世代が「子どものために残した」と思っても、子どもにとっては「争いの種」となることが珍しくないのです。
3. 相続対策の本質は「家族の安心」にある
では、相続対策の本質とは何でしょうか。
それは、**「家族に安心を残すこと」**です。
- 相続税を払うために不動産を泣く泣く売却する事態を避ける
- 修繕や管理の負担で家族が疲弊しないようにする
- 兄弟間で公平に分けられる仕組みを整える
- 家族の関係を守り、安心して未来に進めるようにする
これこそが、相続対策の最終的な目的です。
4. 正しい相続対策のポイント
これまで解説してきた内容を踏まえると、正しい相続対策のポイントは次の通りです。
① 節税より納税資金の確保
生命保険や生前贈与を活用し、相続人が安心して納税できる現金を準備しておく。
② 不動産を「残す」のではなく「活かす」
収益性が低い不動産は売却や転用を検討し、相続人が管理しやすい資産構成に整える。
③ 相続人の意思を尊重する
子どもが本当に不動産を引き継ぎたいのかどうか、事前に確認しておく。
④ 公平性を担保する仕組み
代償分割や生命保険を活用し、兄弟間の不満を防ぐ。
⑤ 承継計画を整える
アパートを残すなら「誰が経営を担うのか」「修繕費や納税資金はどうするのか」を明確にする。
5. 専門家とチームを組む重要性
相続は税務・法務・不動産が絡み合う複雑な問題です。
一人で判断すると、どうしても偏りや抜け漏れが生じます。
- 税理士:相続税の試算と節税の是非判断
- 司法書士:遺言や登記、権利関係の整理
- 不動産コンサルタント:賃貸需要や資産組み替えの提案
これらの専門家とチームを組むことで、ようやく**「家族にとって本当に安心できる相続対策」**が形になります。
6. 最後に ― 資産を「資産」として残すために
相続は「節税」や「資産を多く残すこと」がゴールではありません。
むしろ、間違った対策によって資産が「負動産」と化し、家族に負担や争いを残してしまうことが最大のリスクです。
大切なのは、
- 納税資金の準備
- 家族が困らない資産の残し方
- 承継計画の整備
- 専門家との連携
これらを整えることで、初めて資産は「資産」として家族に役立ち続けます。
相続対策のゴールは、節税ではなく“家族の安心”。
それを忘れないことが、正しい相続対策への第一歩なのです。
株式会社アクシア
住所:埼玉県吉川市保1-29-9
電話番号:048-940-1700
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