建て替え・リフォームに伴う立ち退き:正当な理由とは?

query_builder 2024/05/26
相続土地
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■建て替え・リフォームに伴う立ち退き:正当な理由とは?

不動産を借りる際、地主や大家からの不意の立ち退きを要求されると、非常に不安になります。そのため、法律はこの点において、借地人や借家人を保護するために正当事由の要求を設けています。しかし、具体的にどのような事情が正当事由となるのか、特に老朽化が原因のリフォームの場合はどうなるのかを解説します。

 

1. 借地の立ち退き要件

借地のケースでは、土地を有償で貸し出し、その上に借地人が自ら建物を建てることで借地権が成立します。このため、大家が一方的に立ち退きを求めることは法律によって厳しく制限されています。借地借家法に基づき、借地人は強力に保護されているのが現状です。

 

立ち退きが認められるのは、以下のような限られた状況下でのみです:

 

地域全体の再開発が進行中で、他の住人がすでに立ち退いている場合

大家がその土地に自己の建物を建設し使用するための強い必要性がある場合

借地人が長期間にわたりその建物を利用していない場合

これらの条件が揃っても、立ち退きを実行するには適切な立退料の支払いが前提となります。立退料は、その土地や建物の価値、立地条件などを考慮して決定されることが一般的です。

 

2. 借家の立ち退き要件

借家の場合、立ち退きを要求する正当な理由としては、以下が考えられます:

 

建物が老朽化しており、住むのが安全ではなくなっている場合

大家自身がその建物を使用する必要が生じた場合

特に老朽化が原因のリフォームを行う必要がある場合、安全性を考慮して借家人に立ち退いてもらうことは正当な理由となり得ます。ここでも、立ち退きに際しては適切な補償が必要です。立退料の計算は、借家人が住み続けた期間、建物の状態、リフォームによる価値向上の見込みなど、多岐にわたる要素を考慮します。

 

3. 特殊なケース:定期借地と更地の使用

一方で、あらかじめ契約で更新なしと定められた定期借地では、契約期間の終了に伴い自動的に土地が返還されます。また、借地人が更地を単なる資材置き場として使用している場合など、借地権の目的に合致しない利用をしている場合は、正当事由を必要とせずに立ち退きを求めることが可能です。

 

■建物賃貸借契約と正当事由による立ち退きの必要性

建物の賃貸借においては「継続」が原則とされています。賃貸人(借り主)にとって、借りている土地や建物は生活の基盤であり、突然追い出される不安にさらされることなく、安心して生活や事業を営むことが可能であるべきです。これが、貸主からの一方的な立ち退き要求に対して、正当事由が必要とされる根拠です。

 

■正当事由とは何か?

正当事由とは、立ち退きを求めるに足りる合理的な理由を指します。これには、建物の老朽化、安全性の確保、所有者の自己使用など、様々な状況が含まれます。しかし、これらの事由が認められるか否かは、具体的なケースにより異なります。ここでは、いくつかの事例を通して正当事由に基づく立ち退きが認められた例を見ていきます。

 

■正当事由に基づく立ち退きの具体的事例

事例1:老朽化と安全性の確保

築40年が経過した共同住宅についての事例です。この建物は、耐震性の問題や設備の劣化が進んでおり、建て替えが必要と判断されました。この場合、立ち退き要求には引越し費用や賃料差額補填などの費用が含まれるべきであるとされました(平成12年東京高裁)。このようなケースでは、立ち退き料として引っ越し代その他契約金などの諸費用と現賃料と引っ越し先の賃料の差額1~2年分を支払うことになりました。

 

事例2:無断改築による信頼関係の破壊

昭和初期に建てられた木造3階建ての共同住宅で、賃借人が無断で改築を行った事例です。この改築が原因で貸主との信頼関係が破壊され、契約解除と建物の明渡しが要求されましたが、無断改築自体が契約解除の正当事由とは認められませんでした。しかし、立ち退き料の支払いを通じて、正当事由が補完される形での立ち退きが認められました(平成20年東京地裁)。

 

事例3:耐震性の問題

建物の耐震性能に問題があり、安全確保のために立ち退きが要求されたケースです。この事例では、建物が震度5弱程度の地震に耐えられない可能性が高いと判断され、人命の安全を考慮して、早急な立ち退きが認められました(平成25年東京地裁)。この場合も、適切な立ち退き料が支払われることが条件となります。

 

事例4:建物の全面改修の必要性

竣工後50年を超える建物で、老朽化が著しく、耐震補強が不可欠であった事例です。このケースでは、改修費用が莫大であり、新たな安全基準に適応するためには建物の全面的な改修が不可避でした。ここでも、立ち退き料の支払いにより正当事由が補完され、立ち退きが認められました(平成24年東京地裁)。

 

事例5:正当事由による解約が認められなかったケース

賃貸人が建物の倒壊の危険を理由に契約解約を求めたものの、裁判所は通常の補修で危険が回避できると判断し、正当事由を認めませんでした。これにより、賃貸人は補修工事を行うことを命じられました(平成22年東京地裁)。

 

■正当事由による立ち退きの適切な進め方

賃貸契約における立ち退きは、単に「来月には出て行ってください」と言うだけでは認められません。借地借家法によれば、解約の申し入れは最低でも6か月前に行う必要があります。この規定は、賃借人にとって転居先を探すための十分な時間を確保するために重要です。

 

立ち退き請求の適切な進め方

立ち退きを求める際には、以下のステップを丁寧に実行することが求められます。

 

事情の説明と交渉の開始:まず、賃借人に対して立ち退きの理由を詳細に説明し、誠実な交渉を始めることが大切です。これにより、賃借人も状況を理解しやすくなります。

 

立退料の提示と合意形成:賃借人との交渉では、適切な立退料やその他の条件を提示し、双方が納得する形で合意に達することが望ましいです。この過程で書面による合意を交わすことで、後々のトラブルを避けることができます。

 

■老朽化した住居のリフォームが立ち退きの正当事由になるか

建物が老朽化していて安全性が確保できない場合、そのリフォームは通常、立ち退きの正当事由として認められます。特に、現行の耐震基準を満たさない古い建物や、外壁の損傷が激しい場合などがこれに該当します。しかし、単に外観の老朽化のみでリフォームを行い、高額な賃料を目指す場合には、正当事由としては認められにくいでしょう。

 

立ち退き拒否の対応方法

賃借人が立ち退きを拒否する場合、拒否の理由を明確に理解し、それに応じた適切な対策を講じることが重要です。例えば、賃借人が高齢で転居に不安を感じている場合は、転居先の斡旋や支援を行うこớiとで解決へと導くことができるかもしれません。また、転居費用の負担や賃料差額のサポートを提案することで、納得感を持ってもらえる可能性があります。

 

賃借人の心情に配慮しながら誠実に交渉を進めることが、円滑な立ち退きへとつながります。特に、立ち退き理由が弱い場合や、交渉が難航している場合には、早めに専門家や弁護士への相談を検討することが賢明です。

 

■まとめ

立ち退きはデリケートな問題であり、正当事由の有無にかかわらず、賃借人との信頼関係を維持しながら進めることが重要です。大家側としては、法的な要件を満たすだけでなく、人間的な配慮をもって対応することが非常に重要です。

 

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